令和4年6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022 新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」(骨太方針2022)が経済財政諮問会議での答申を経て、閣議決定されました。 全身の健康と口腔の健康に関する科学的根拠の集積と国民への適切な情報提供、生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討、オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実、歯科医療職間・医科歯科連携を始めとする関係職種間・関係機関間の連携、歯科衛生士・歯科技工士の人材確保、歯科技工を含む歯科領域におけるICTの活用を推進し、歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む。また、市場価格に左右されない歯科用材料の導入を推進する。
歯科検診は日本では現在、高校生までは義務付けられていますが、大学生や社会人は対象になっていません。歯科検診の受診率をみてみますと1年以内に受けた人は2人に1人。また40歳50歳などが受けられる歯周病の検診は20人に1人しか受けていないという現状があります。これまでも「生涯にわたって歯科検診を強化すべき」ということは実は政府の「骨太の方針」には書かれていましたが、今年は新たに「国民皆歯科検診」という表現になりました。検診を拡大したい背景について厚生労働省の担当者は「歯周病予防などをすることでほかの病気の予防にもつながる」と話しています。歯周病は細菌の感染によって引き起こされる疾患で、歯の周りの歯ぐきや、歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。最悪の場合は歯を抜かなければならなくなります。この歯周病が、誤嚥性肺炎や糖尿病、心臓病、脳梗塞といったほかの病気や、早産などにつながる可能性も指摘されています。“万病の元”である歯周病からほかの病気につながるケースを予防できれば、結果的に全体の医療費を抑制できる可能性もあるといいます。
日本歯科医師会によりますと、こんなデータもあるそうです。歯が19本以下の人に比べて20本以上ある人のほうが比較したすべての世代で医療費が少なくすんでいるということです。
政府が今年の「骨太の方針」で、国民皆歯科検診の導入を検討する方針を盛り込んだことを受けて、日本歯科医師会の堀会長は今後3年から5年をめどに取り組みを進めていく考えを示しました。 一方で、「検診の仕組みなど、まだまだ課題は多い」として、具体的な制度のあり方については引き続き検討が必要だとしています。
歯科衛生士 新戸 美佐子