バクテリアセラピーという言葉をご存じでしょうか。
「バクテリアセラピー」(学術名: Bacterio-therapy)とは、体内菌のバランスを整えることで病気の治療や予防を行うという医療技術です。スウェーデンを中心に臨床実用化が進められ、日本でも歯科分野を中心に善玉菌を利用して体内に常在する菌の質やバランスを改善することで、疾病の予防や治療に役立てることをめざして、研究と臨床への応用がすすめられています。
ヒトの体には約500種500兆個以上、重さに換算すると約2kg にもなる膨大な量と種類の菌が生息しています。この菌はヒトに有益な「善玉菌」、病気やトラブルの原因になる「悪玉菌」、優勢な菌に合わせてどちらにもなる「日和見菌」の3種類に分類されます。そして、体内菌のバランスが悪玉菌に優位な状態になってしまうと、様々な病気を引き起こすことがわかっています。
バクテリアセラピーは、善玉菌を補給することで体内菌のバランスを整える医療技術。日本の病院の標準的な治療の妨げにならないだけでなく、その治療を促進し、また病気の再発を防ぐといったメリットもあります。
具体的なものとして、ヨーグルトなどでも有名なロイテリ菌があります。
ロイテリ菌は「細菌の指揮者」「スーパー乳酸菌」などと呼ばれることもある、特別な乳酸菌です。ヒトの体にとって有害な悪玉菌を感知した時だけロイテリン(3-hydroxypropionaldehyde®)という天然の抗菌物質を産生。ビフィズス菌などのヒトにとって有益な常在菌に対してはこのロイテリンを産生しないため、体内菌の多様性を維持しながらカラダの善玉菌と悪玉菌のバランスを整えることができます。
お口の中に対しても、細菌叢を整えたりキシリトールと一緒に摂取することにより、虫歯の菌を減少させるという臨床データもあります。
何より、これらは薬剤でなないので耐性菌を作らず、アメリカの厚労省に属する機関である食品医薬品局(FDA)で、長年の食経験や科学的な治験を総合的に評価し、食品添加物としての使用にリスクがないと認められています。
これから時代の、体やお口の健康を整える方法としてとても良い考え方ではないかなと思っております。
今後も新しい研究データや商品の開発等、動向を追っていきたいと思っております。
歯科衛生士 高橋 恵