毎年冬になると全国各地で流行するインフルエンザ
子供から高齢者まで幅広い世代で発症し、あっという間に拡散する強い感染力を持っています。気管支炎や肺炎を同時またはその後発症した場合、高齢者では重症化しやすく、これが命取りになることもあります。
みなさんはどのような方法でインフルエンザの予防をしていますか?
実はあまり知られていませんが効果的な予防法があるのです。
実はお口が汚いとインフルエンザにかかりやすいのです。
うがいも大事ですが『歯みがき』がもっと大事なのです。
一般的に風邪は『細菌』か『ウイルス』のどち かが原因で発症します。『細菌』と『ウイルス』では大きさがずいぶん違いますが、もっと違うのが感染のメカニズム。『細菌感染』の場合は粘膜に付着するだけで炎症を起こし、のどが痛んだり、熱が出たりします。一方『ウイルス感染』の場合は粘膜に付着しただけでは発症しません。細胞の中に入り込むことで発症するのです。そしてその時に重要な役目をしているのが『酵素』。インフルエンザウイルスの表面には『カギ』と『ハサミ』のような働きをする2種類の酵素があります。インフルエンザウイルスが喉などの粘膜にくっついた後、一方の酵素が『カギ』を差し込んで細胞膜をこじ開けることでウイルスが細胞内に入ります。そして細胞の中で仲間を増やし大増殖。するともう1つの『ハサミ』を持った酵素が隣の細胞へたくさんのウイルスを大放出。こうして感染が拡大していきます。そしてこの酵素を活発にしていく細菌があるのです。特に気を付けなければいけないのが歯周病菌なのです。細菌の中でも最強なのが口腔細菌界の魔王!『歯周病菌』。 歯周病菌が多いとさらに被害は拡大。歯周病菌がウイルスの酵素を活発化させるのです。そうするとウイルスが喉の細胞の中に入りやすくなってインフルエンザにかかってしまいます。しかも厄介なことにプラークに棲み付く歯周病菌は、抗生物質などの薬で撃退したり除去したりすることができず、人間の体の免疫細胞でも撃退できないのです。つまり口腔内の衛生状態が悪い人は、インフルエンザにかかりやすくなるのです。しかし、インフルエンザなどのウイルス性疾患も丁寧な口腔ケアによって感染リスクを減らせるといわれています。事実、インフルエンザが流行する冬季6か月間にわたり、在宅の高齢者で歯科衛生士による口腔ケアを受けた人はインフルエンザの発症率は1%だったのに比べ、受けていなかった人の発症率は9.8%と約10倍も違ったというのです。つまり、口腔ケアを受けた人は受けていない人に比べ発症率が89.8%低いというデーターがあります。(日本歯科医学会誌25号)
特に寝たきりの高齢者の方はインフルエンザの合併症である肺炎を防ぐためにもお口の中を清潔に保つことが重要です。
また、新型コロナウィルス感染症の原因であるSARS-CoV-2もインフルエンザウイルスと同じ付着様式であるため、適切な口腔ケアが有効とされています。
何よりも日ごろからお口の中を清潔にしていくことが一番大事です。そのためにはしっかりと歯を磨き、かかりつけの歯医者さんに行って磨き残しを取ってもらうことと正しい歯みがき指導を受けることです。
また、歯みがきする際に注意していただきたいのは、歯みがき時はどうしても、自分の唾液を触ったり、唾液の飛沫を飛ばしてしまいます。感染予防としては唾液に他の人が接触したり、飛沫を吸い込んだりしないよう注意する必要があります。例えば歯みがきをする時、口を閉じて磨くことが感染予防に有効とされています。また、歯みがきのタイミングを他の人とずらしたり、歯みがきをする場所の換気をよくするなど三蜜を避けることは予防効果があると思われます。また、家庭内でも使用していない時の家族の歯ブラシを接触させないなどの配慮も、家庭内感染を防ぐと思われます。
歯科衛生士 新戸 美佐子